ヒプノセラピーは怪しいのか?
2022年9月5日
1. ヒプノセラピーは怪しいのか?
「ヒプノセラピーは怪しい」と思われることがあります。
その理由は、多くの場合「催眠=操られる」「テレビの催眠ショーのようなもの」という誤解にあります。
しかし、ヒプノセラピー(催眠療法)は科学的にも効果が検証されている心理療法の一つであり、医療・心理の現場でも補助的に用いられています。
本記事では、ヒプノセラピーが本当に怪しいのか?
そして、安心して学び・受けられる方法は何か?を、科学・心理・実践の三つの観点から詳しくお伝えします。
2. 催眠とヒプノセラピーの違い
● 催眠(Hypnosis)とは
催眠とは「意識が集中し、外的な雑念が減少した状態」です。
このとき脳からはアルファ波やシータ波が多く出て、集中力・記憶力・想像力が高まり、暗示を受け入れやすい状態になります。
● ヒプノセラピー(Hypnotherapy)とは
催眠状態を使って潜在意識に働きかける心理療法。
「癒し」や「行動変容」「目標達成」に応用され、世界中の医療・心理領域で活用されています。
● 催眠術との違い
テレビやステージでの「催眠術ショー」は、演出や暗示の実験的要素が強く、心理療法とは全く異なります。
ヒプノセラピーでは、相手の自由意志を尊重し、本人の望む変化をサポートするのが目的です。
3. 科学が証明する「催眠状態」の脳の変化
スタンフォード大学の研究(2016年)によると、催眠状態では前帯状皮質など特定の脳領域が活性化し、注意と意識の切り替えが促進されることが分かっています。
出典:Stanford Medicine – Study identifies brain areas altered during hypnotic trances
つまり催眠は“魔法”ではなく、脳科学的に説明できる意識状態の変化なのです。
4. ヒプノセラピーの効果を示す科学的エビデンス
複数の国際的メタ分析により、以下のような分野で効果が確認されています。
| 分野 | 効果 |
|---|---|
| 疼痛コントロール | 医療処置・慢性痛の軽減 |
| 不安・ストレス | 自律神経の安定・緊張緩和 |
| 睡眠障害 | 入眠促進・リラクゼーション |
| IBS(過敏性腸症候群) | 腸の不快症状緩和(NCCIH報告) |
| 手術・出産 | 不安軽減・回復促進 |
出典:
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Rosendahl et al. (2023) “Systematic overview of meta-analyses on hypnosis in health care” PMC10807512
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APA Monitor (2024) “The science of hypnosis” APA.org
ただし、万能ではないことにも注意が必要です。
ヒプノセラピーは、医学的治療の代替ではなく、心身のバランスを整える補完的療法として位置づけられます。
5. 暗示療法は怪しくない
ヒプノセラピーの代表的な方法が「暗示療法」です。
これは潜在意識に肯定的な言葉をインストールして、思考と行動を変化させる方法です。
例:
「私は人前で堂々と話せる」
「私はノンスモーカーになり、気分が良い」
「私は目標体重になって健康的な生活をしている」
科学的にも、「リラックスする」という暗示で心拍数が下がることや、「体が温かくなる」という暗示で体温が上がることが確認されています。
つまり暗示は脳と身体をつなぐ“心理生理的反応”を活用した方法なのです。
6. 年齢退行と前世療法はどうなのか?
● 年齢退行療法とは
トラウマや思い込みの原因となった過去の記憶に戻り、新たな理解を得て癒す技法です。
心理学的にも、フロイトやユングの理論に基づいた「再体験による統合」という考え方と一致しています。
ただし、記憶は再構成される可能性があるため、セラピストの誘導やクライアントの想像が混ざるリスクもあります。
信頼できる訓練を受けたセラピストのもとで行うことが大切です。
● 前世療法について
「前世療法」は宗教的な概念に近く、科学的に前世を証明する研究は存在しません。
しかし、心理療法としては「象徴的な物語を通じて自己理解を深める手法」として活用されることがあります。
実際に、ユング心理学の「アクティブ・イマジネーション(積極的想像法)」と同様に、無意識のメッセージを読み解く手段として使うことができます。
7. 怪しいセラピストに注意するポイント
ヒプノセラピーそのものは怪しくありませんが、無資格・独学・誇大宣伝をするセラピストには注意が必要です。
次のチェックリストを参考にしてください。
-
✅ 公認団体(NGH、ABHなど)から正式認定を受けているか
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✅ セッションの内容と目的を明確に説明してくれるか
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✅ 「すべての病気が治る」など、過剰な主張をしていないか
-
✅ 守秘義務・倫理を守っているか
信頼できる講師・スクールを選ぶことが、最も確実な安心への第一歩です。
8. まとめ:ヒプノセラピーは怪しくない、正しく学べば効果的
ヒプノセラピーは、科学的根拠のある心理療法であり、適切に行えば安全で有用です。
ただし、宗教やスピリチュアル的に誇張された表現や、十分な教育を受けていない指導者には注意が必要です。
安心して学びたい方・受けたい方は、認定スクールで体系的に学ぶことをおすすめします。
この記事の執筆者
今本忠彦(いまもと・ただひこ)
CLEAR LIGHTヒプノセラピースクール代表
NGH米国催眠士協会(National Guild of Hypnotists) 認定マスタートレーナー
ABH米国催眠療法協会(American Board of Hypnotherapy) 認定マスタートレーナー
全日本ヒプノセラピスト協会(All Japan Hypnotherapist Association) 認定マスタートレーナー
2009年より、1,000名以上のプロヒプノセラピストを養成。
現在、CLEAR LIGHTヒプノセラピースクールにて、プロのヒプノセラピストを目指す方々に実践的な指導を行っている。
著書に『世界基準のヒプノセラピー入門(河出書房新社)』、
『7日間で成功する自分になる!「ヒプノコーチング®」(さくら舎)』がある。
日本におけるヒプノセラピー教育の第一人者として活動中。
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