ヒプノセラピーは怪しい?危険?プロのヒプノセラピストが本音で解説
「ヒプノセラピーって怪しくない?」「洗脳されたりしない?」
「ヒプノセラピー 怪しい」と検索してこのページに来られた方の多くは、
そんな不安や疑問を持っているのではないでしょうか。
その感覚はとても自然なものです。
テレビの催眠ショーや、誇張した広告を行う一部の事業者の影響で、
「ヒプノセラピー=怪しい」「なんだか危険そう」というイメージが広がっていることは事実だからです。
しかし結論から言えば、
きちんとした訓練を受けた専門家が行うヒプノセラピーは、“怪しいもの”でも“危険なもの”でもありません。
本記事では、以下の3点を中心に、できるだけ分かりやすく解説していきます。
◾️ なぜ「ヒプノセラピーは怪しい」と言われてしまうのか
◾️ 科学や心理学の観点から見た催眠状態の実像
◾️ 本当に注意すべき「怪しいセラピスト」の見分け方
ヒプノセラピー教育に長年携わってきた専門家の立場から、「怪しい」「危ない」という不安を解消し、安心して学べる・受けられる正しい知識をお伝えしていきます。
この記事の執筆者
今本忠彦(いまもと・ただひこ)
CLEAR LIGHTヒプノセラピースクール代表
NGH米国催眠士協会(National Guild of Hypnotists) 認定マスタートレーナー
ABH米国催眠療法協会(American Board of Hypnotherapy) 認定マスタートレーナー
全日本ヒプノセラピスト協会(All Japan Hypnotherapist Association) 認定マスタートレーナー
2009年より、1,000名以上のプロヒプノセラピストを養成。
現在、CLEAR LIGHTヒプノセラピースクールにて、プロのヒプノセラピストを目指す方々に実践的な指導を行っている。
著書に『世界基準のヒプノセラピー入門(河出書房新社)』、
『7日間で成功する自分になる!「ヒプノコーチング®」(さくら舎)』がある。
日本におけるヒプノセラピー教育の第一人者として活動中。
ヒプノセラピーは怪しいのか?
「ヒプノセラピーは怪しい」という印象を持つ方は、実は少なくありません。
その多くは、“催眠=操られるもの” というイメージによるものです。 テレビの催眠ショーのように、「セラピストが人を思いどおりに動かす」という誤解が広がっているためです。
しかし、本来の催眠には「人をコントロールする力」はありません。
ヒプノセラピーは、クライアントを深くリラックスさせ、 その状態で「良い暗示(=ポジティブな言葉)」を受け入れやすくすることで、 潜在意識の働きを整えていく心理的アプローチです。
つまり、セラピストが人を操るのではなく、本人の中にある本来の力や可能性を引き出すための方法なのです。
また、ヒプノセラピー(催眠療法)は科学的にも効果が研究されている心理療法で、 現在では医療・心理の現場でも補助的な療法として取り入れられています。
ヒプノセラピーと催眠術の違い
● 催眠(Hypnosis)とは
催眠とは「意識が一点に集中し、余計な雑念が静まった状態」のことです。
このとき脳にはアルファ波やシータ波が多く現れ、集中力・記憶力・想像力が高まり、暗示が入りやすくなると言われています。
● ヒプノセラピー(Hypnotherapy)とは
催眠状態を使いながら、潜在意識に働きかけていく心理療法です。
主な手法には「暗示療法」「イメージ療法」「年齢退行」「インナーチャイルドの癒し」「前世療法」などがあります。
これらは「癒し」「行動の変化」「目標達成」のサポートとして活用され、 世界中の医療・心理領域で応用されている確立されたアプローチです。
● 催眠術との違い
テレビやステージでの「催眠術ショー」は、エンターテインメント目的であり、 心理療法とはまったく別のものです。
演出によって「人を自由に操れるように見える」だけで、 実際には人の心を支配することは簡単ではありません。
ヒプノセラピーは、相手の自由意志を最大限に尊重し、本人が望む変化をサポートするための心理療法です。
科学が証明する「催眠状態」の脳の変化
スタンフォード大学の研究(2016年)によると、催眠状態に入ると脳の中の「前帯状皮質」や「島皮質」などの領域が変化し、
注意を向ける力や、意識を切り替える能力が高まることが分かっています。
つまり、催眠とは “注意の質が大きく変わった状態” だと言えます。
この研究では、催眠状態のときに次のような特徴が確認されました。
■ 集中力が高まりやすくなる(周りの雑念が自然に小さくなる)
■ イメージや暗示を受け取りやすい脳の回路が活性化する
■ 自己批判の声が弱まり、心理的な抵抗が減る
■ 「体験に没入する力」が高まる(イメージ療法が効果を発揮しやすい)
これらはすべて脳活動として確認されているものであり、催眠状態が「単なる気のせい」や「暗示に弱い人だけがなる不思議な現象」ではないことを示しています。
また、ハーバード大学やイェール大学の研究では、催眠状態では痛みの知覚をコントロールする脳領域が抑制されることも報告されています。
その結果、医療現場では鎮痛(痛みの軽減)の補助として催眠が使われるケースもあり、心だけでなく身体の反応にも変化が起こることがわかっています。
このように催眠は “魔法の力” ではなく、脳科学によって裏付けられた意識状態の変化です。適切な方法で用いることで、心や行動の変化を自然にサポートすることができます。
出典: Stanford Medicine – Study identifies brain areas altered during hypnotic trances
ヒプノセラピーの効果を示す科学的エビデンス
複数の国際的なメタ分析や研究により、ヒプノセラピーが以下のような分野で効果を持つことが確認されています。
● 疼痛コントロール
医療処置時の痛みの軽減や、慢性的な痛みの緩和が報告されています。
● 不安・ストレス
自律神経を整え、緊張を緩和する効果があるとされています。
● 睡眠障害
入眠をスムーズにし、深いリラクゼーション状態をつくることで睡眠の質を改善します。
● IBS(過敏性腸症候群)
腸の不快症状を和らげる効果があるという報告が、米国NCCIHの研究でも示されています。
● 手術・出産
医療場面において不安を軽減し、回復を促進する補助療法として活用されています。
出典(Reference)
● Rosendahl et al. (2023) “Systematic overview of meta-analyses on hypnosis in health care”
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10807512/
● APA Monitor (2024) “The science of hypnosis”
https://www.apa.org/monitor/2024/04/science-of-hypnosis
暗示療法とは?科学的根拠があるヒプノセラピーの基本技法
ヒプノセラピーの代表的な技法が、「暗示療法」 です。 これは、催眠状態で高まる 被暗示性 を活かして、潜在意識に肯定的な言葉を繰り返し届けることで、思考・感情・行動の変化を促す方法です。
催眠に入ると、意識の緊張がゆるみ、集中力が高まり、暗示を受け入れやすい状態になります。 ただし、これは「操られる」状態ではありません。
人は催眠状態であっても、望まない暗示は受け入れないように脳が働いています。
潜在意識は本人の価値観に反する内容を拒否するため、暗示療法は安全な心理的アプローチとして確立されています。
暗示の例
- 「私は人前で堂々と話せる」
- 「私はノンスモーカーになり、気分が良い」
- 「私は目標体重になって健康的な生活をしている」
これらはクライアント自身が本当に望んでいる変化である場合、潜在意識に繰り返し届けることで、新しい行動・感情パターンが自然に形成されていきます。
科学的にも確認されている暗示の効果
実際に、科学研究でも以下のような暗示の効果が確認されています。
- 「リラックスする」という暗示 → 心拍数が下がり、筋肉の緊張がゆるむ
- 「体が温かくなる」という暗示 → 末梢体温が上昇することがある
このように暗示は、脳と身体のつながり(心理生理的反応)を利用する科学的な手法といえます。
つまり暗示療法は、本人が望む変化をスムーズに潜在意識に届ける、安全で科学的根拠のある心理療法です。
年齢退行(Age Regression)の科学的エビデンス
年齢退行とは、催眠状態で意識を幼少期へと戻し、そのときの感情や記憶にアクセスする技法です。
科学的に見ると、年齢退行は「記憶をそのまま正確に再生する技術」ではなく、感情や体験の再想起を促す心理的アプローチとして理解されています。
研究によれば、催眠下での記憶は実際の出来事とイメージが混ざりやすく、100%の正確性が保証されるものではありません。
しかし、年齢退行は感情処理、トラウマの統合、心の癒しに役立つ場合があることが臨床的に数多く報告されています。
たとえば、催眠心理学の研究領域では、幼少期の感情の再体験が感情解放(カタルシス)や再評価(リフレーミング)を促すことが示されています。
そのため、年齢退行は「科学的に記憶を再現する技法」ではなく、心理的癒しを目的としたセラピー技法として位置づけるのが適切です。
前世療法(Past Life Regression)の科学的エビデンス
前世療法は、催眠状態で「過去世の記憶」とされるイメージにアクセスする技法です。
科学的には、前世の存在を直接証明する研究はなく、過去世の映像や物語が実際の歴史的事実であるかどうかは検証できません。
しかし、心理学の観点では、前世療法が象徴的な物語(シンボリック・ストーリー)として機能し、
クライアントの問題理解や感情の統合に役立つケースが報告されています。
たとえば、心理学者 Edith Fiore や Brian Weiss 医師の臨床例では、「前世のイメージを通じて心理的変化が起こる」ことが示されています。
これは、前世療法が「事実の検証」ではなく、心の深層に働きかけるイメージ療法として有効に働く可能性を示しています。
現在の科学の立場としては、前世の実在を証明することはできませんが、
前世療法が心理療法としてクライアントの気づきや癒しに貢献することは多数の臨床例から確認されています。
ヒプノセラピーが「怪しい」と思われてしまう3つの理由
- テレビやYouTubeの「ショー的な催眠」のイメージ
- 科学的根拠よりもスピリチュアル色を強く打ち出す一部の情報発信
- 十分な訓練を受けていないセラピストによる誇大な宣伝
こうした要因が重なり、ヒプノセラピー=怪しい・危険というイメージを持たれてしまうことがあります。
怪しいセラピストに注意するポイント
ヒプノセラピーそのものは怪しくありませんが、 無資格・独学・誇大宣伝をするセラピストには注意が必要です。 次のチェックリストを参考にしてください。
- ✅ 公認団体(NGH、ABHなど)から正式認定を受けているか
- ✅ セッションの内容と目的を明確に説明してくれるか
- ✅ 「すべての病気が治る」など、過剰な主張をしていないか
- ✅ 守秘義務・倫理を守っているか
信頼できる講師・スクールを選ぶことが、最も確実な安心への第一歩です。
まとめ:ヒプノセラピーは怪しくない、正しく学べば効果的
ヒプノセラピーは、科学的根拠のある心理療法であり、適切に行えば安全で有用です。
ただし、宗教やスピリチュアル的に誇張された表現や、十分な教育を受けていない指導者には注意が必要です。
安心して学びたい方・受けたい方は、 認定スクールで体系的に学ぶことをおすすめします。
よくある質問
ヒプノセラピーは本当に「怪しくない」のですか?
ヒプノセラピーは、きちんとした訓練を受けた専門家が行う限り、怪しいものでも危険なものでもありません。
テレビの催眠ショーや誇張された広告によって誤解されがちですが、実際には科学的な研究も進んでいる心理療法の一つです。
催眠に入ると、セラピストにコントロールされたり洗脳されたりしませんか?
いいえ、そのようなことはありません。催眠状態でも意識は保たれており、自分の価値観に反する暗示は受け入れないよう脳が働いています。
ヒプノセラピーは、クライアントの自由意志と主体性を尊重しながら、望む変化をサポートするための方法です。
ヒプノセラピーに副作用や危険性はありますか?
健康状態が安定している方であれば、通常は大きな副作用はありません。
ただし、重度の精神疾患などをお持ちの場合は、主治医の許可が必要になることがあります。心配な方は、必ず事前に相談のうえご利用ください。
心療内科や病院で治療中でもヒプノセラピーを受けられますか?
原則として、医療の代わりではなく「補完的なサポート」として位置づけられます。
通院中・服薬中の方は、主治医に相談したうえで受けていただくのが安心です。セラピストにも現在の治療内容を正直にお伝えください。
ヒプノセラピーは1回で効果が出ますか?
1回のセッションで気持ちが楽になったり、視点が変わる方もいますが、すべてのケースが「一度で解決」するわけではありません。
お悩みの内容や期間によって、数回〜数セッションを通して、少しずつ心や行動パターンを整えていくことが多いです。
怪しいセラピストに当たらないためには、何をチェックすればいいですか?
NGH・ABHなどの公認団体から正式な認定を受けているか、経歴や資格を明確に公開しているかを確認しましょう。
「何でも治る」「必ず成功する」といった誇大な表現や、相場から極端に外れた高額料金を提示するところには注意が必要です。
クリアライトが提供しているヒプノセラピー講座
目的やレベルに合わせて選べる3つの講座を開講しています。どの講座も実践中心で、確かな技術を身につけられるカリキュラムです。















