ヒプノセラピーと潜在意識(無意識)
2022年2月8日
この記事の執筆責任者:クリアライトヒプノセラピースクール代表:今本忠彦世界最大級の会員数と最も長い歴史を誇る米国のヒプノセラピストのプロ団体、NGH米国催眠士協会(National Guild of Hypnotists)のマスタートレーナーとして活動中。2009年より現在まで、800名を超えるプロのヒプノセラピストの養成実績を誇る。執筆書に、『世界基準のヒプノセラピー入門(河出書房新社)』がある。
ヒプノセラピーで言う『潜在意識』とは、”あなたの意識の一部だけれど、今は、意識していない意識”と説明することができます。
例えば、今、この文章を読んでいるあなたに「今、この瞬間に、服と肌が触れている感覚を感じてください。」と聞けば、いかがでしょうか?
確かに、感じられますよね。
しかし、私がこの質問をする前に、それらの感覚に気づいていましたか?
おそらく、そうでなかったと思います。
しかし、わたしが、その感覚に気づいてください。
といえば、気づくことができました。
つまり、私が質問する前は、その感覚は”無意識”であった訳です。
これが潜在意識(無意識)の入り口になります。
私たちは今、この文章を読みながら、さまざまな感覚に気づいていると思い込んでいます。
しかし、実際は、気づいている感覚は、10%程に過ぎず、気づいていない意識がたくさんあります。
先ほどの、服と体が触れている感覚も、そのうちの一つですが、”瞬き”、や、”呼吸”も、私たちが意識していないところで行われています。
また、心臓も勝手に動いています。
このように、私たちの体の機能も、全て潜在意識によってコントロールされています。
すべての学びは潜在意識で
また、全ての学びも潜在意識で行われています。
例えば、私があなたに「あなたが幼い頃に住んでいた家の電話番号を教えてください。」
と聞けば、そして、それを覚えていたとすれば、あなたは意識のどこかから、その電話番号を引き出してくるでしょう。
そして、この電話番号はどこにストックされていたかというと、あなたの無意識、つなり、潜在意識にストックされています。
このように、私たちの全ての学びや記憶は、潜在意識にストックされています。
また、パターン化された身体の動きも潜在意識にストックされていますし、私たちの信念も潜在意識にストックされています。
潜在意識の性質、その1
ヒプノセラピーと潜在意識の関係を語る上で、最も大切な潜在意識の性質は、現実として起こっていることなのか?
イメージの中で起こっていることなのか?
潜在意識は区別ができないという点です。
例えば、レモンをイメージしましょう。
それをナイフでスライスして、輪切りにして、その一片をかじってください。
どうでしょう?
唾液が出たり、背中がせりあがるような感じがしたり、といった反応があると思います。
実際にレモンをかじったわけではないのに、実際にレモンをかじった時の同じ反応を起こします。
潜在意識が現実で起こっていることと、イメージとして起こっていることを区別できない、というのは、このことを言います。
よって、例えば、テニス選手がイメージの中で何度もボールを打ち返すイメージをするだけでも、実際の実力が上がっていくのは、このためです。
潜在意識の性質、その2
潜在意識は暗示に従うという性質を持っています。
つまり、とても素直なのです。
潜在意識には、顕在意識のような判断基準はありません。
よって、「できる」といえば、それを信じますし、「できない」といえば、それを信じます。
フォード社を設立した、ヘンリー・フォードの有名な言葉に、「あなたができると思っても正しいし、できないと思っても正しい」という言葉がありますが、これは、潜在意識の性質をよく表した言葉です。
潜在意識の性質、その3
潜在意識は繰り返すことで、何かを強く定着させるという性質があります。
私たちは日常生活を送る中で、さまざまなことを学びます。
例えば、スポーツでも、語学でも、ヒプノセラピストになるための練習でも、私たちは、繰り返すことによって、無意識の深い領域にあるパターンを覚え込ませます。
そして、それがしっかり定着すれば、もう、無意識でも、簡単にできるようになります。
つまり、全ての学びは、無意識(潜在意識)で行われています。
末那識と阿頼耶識
顕在意識と潜在意識、つまり、意識と無意識という概念は、心理学者のフロイトによって提唱された考え方ですが、インド思想や、釈迦が説いた仏教の思想には、無意識の最も深い領域に、阿頼耶識という心があると解いています。
顕在意識と潜在意識は、死後は、昨夜の夢の如く、無くなってしまうのですが、阿頼耶識は無くなることはなく、死後もそのまま引き継がれると説かれています。
そして、ここには、前世記憶だけでなく、さまざまな前世を通して行われてきた、カルマ(Karma:サンスクリット語で、”行為”、という意味)も蓄えられており、これらのプログラムも、私たちの今生に大きな影響を及ぼしていると説いています。
私たちは潜在意識のプログラムに沿って世界を体験しています。
私たちが日々体験している世界は、実は潜在意識のプログラムが反映されたものになっています。
社会学者のモリス・マッセイ博士によると、私たちが、0歳から、7歳までを、どのように過ごしたのかが、今の私たちの性格を決定しているといっています。
例えば、あなたのビジネスがうまくいかない時、「大丈夫、大丈夫」と、どんな時でも肯定的に考える人がいる反面、些細な事でも、すぐに、ネガティブに考える人がいます。
このように、日常生活の中で起こる、さまざまな出来事に対して、人はさまざまな反応を見せますが、これらの反応は、私たちの潜在意識の中のプログラムが反映されたものだと言われています。
ヒプノセラピーで暗示を潜在意識にインストールします。
潜在意識のプログラムは、言葉として表現することができます。
例えば、「私は自分に自信が持てない。」や、「私が愛されるはずがない。」といった言葉として現れます。
よって、逆に、潜在意識に言葉をインストールし、その言葉を本当だと思い込ませると、新しいプログラムが潜在意識にインストールされます。
そして、そのプログラムがしっかり定着すると、人は、そのプログラムに沿った行動を起こすことができるようになります。
これが、暗示療法の考え方です。
よって、対人恐怖症の人に、「あなたは人まえでリラックスして話ができる」
と暗示して、それを本当だと思い込ませます。
すると、その人は、人前で堂々と話ができるようになります。
退行催眠で根深いプログラムを解放することができます。
暗示を繰り返すことで、肯定的なプログラムをインストールすることも効果的ですが、潜在意識の深い領域にインストールされている必要のない信念は、ほとんどの場合、幼い頃に作ってしまったものか、あるいは、前世、というものがあるとすれば、そこで作ってしまった場合が多く、この場合、年齢退行や、前世療法というテクニックを使うことで、不必要な感情や信念を解放して、有益なプログラムに書き換えることができます。